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サンタクロース村通信

都会の静寂と安らぎを追い求めて

-ヘルシンキのお勧め4大教会巡りの旅-

靴家さちこ

祝日やイベントがある日には、市民が集い埋め尽くされる階段。観光客もアイスクリームを食べながら日向ぼっこすれば、住んでいる気分が味わえる(画像提供:ヘルシンキ市)

祝日やイベントがある日には、市民が集い埋め尽くされる階段。観光客もアイスクリームを食べながら日向ぼっこすれば、住んでいる気分が味わえる <ヘルシンキ大聖堂>(画像提供:ヘルシンキ市)

サンタクロース村メルマガ読者の皆様、Moi!フィンランド在住ライターの靴家さちこです。5月に入って急に夏のような天気になりました。気温は20℃前後と朝夕は涼しく、空気も澄んでいます。鳥のさえずりもより一層にぎやかで、色とりどりの花が開いては実を結び、まるでこの世の楽園です。子ども達も学期末で浮かれており、大人達もちょっと早めに仕事を切り上げて帰途につく人が増えました。というわけで今回は、こんな抜群なお天気の日に、是非巡礼してみたい、ヘルシンキの美しい教会の数々を紹介します。


【ヘルシンキ大聖堂】

ヘルシンキに来たら、まず訪れてみたい ヘルシンキ大聖堂

ヘルシンキに来たら、まず訪れてみたい <ヘルシンキ大聖堂>

ヘルシンキといえば、この白亜の大聖堂。日本であれば、郷里の山が見えるとほっとするように、この青と白のフィンランド・カラーを装った丸いドームは、地元ヘルシンキっ子の心の故郷です。この大聖堂は、1812年のフィンランドがロシアの統治下だった時代に、ロシアが首都を西のトゥルクからヘルシンキに移した後、建設が始まりました。その後フィンランドがロシアから独立する1917年まで、この教会は「聖ニコラウス教会」と呼ばれていました。

市民の日常生活も包み込むように見下ろすシンボル的存在(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

市民の日常生活も包み込むように見下ろすシンボル的存在(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

荘厳なカトリックの教会ように威圧感がない優しさがほっとする、シンプルな内装(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

荘厳なカトリックの教会ように威圧感がない優しさがほっとする、シンプルな内装(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

 

 

 

人々でにぎわうクリスマスマーケット。サンタクロースも露店を冷やかしながらぶらぶらしている(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

人々でにぎわうクリスマスマーケット。サンタクロースも露店を冷やかしながらぶらぶらしている(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

同じようなドーム型の教会は、欧州各地にありますが、このこじんまりとしたサイズといい、色づかいといい、フィンランド建築のおしゃれ度が際立つ建物といっても過言ではありません。宗派は、福音ルター派、つまりプロテスタントで、フィンランド人の約8割が属するものです。見どころは、大聖堂の屋根にある12使徒の真鍮の彫刻。 これは世界最大の真鍮彫刻のコレクションなのだそうです。

御影石が敷き詰められたフィンランド最大の市民広場、元老院広場(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

御影石が敷き詰められたフィンランド最大の市民広場、元老院広場(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

スウェーデン王国からロシア帝国の支配下に移ったフィンランド人にフィンランド人らしくあることを奨励したロシア皇帝アレクサンドル2世 (画像提供:City of Helsinki Media Bank)

スウェーデン王国からロシア帝国の支配下に移ったフィンランド人にフィンランド人らしくあることを奨励したロシア皇帝アレクサンドル2世 (画像提供:City of Helsinki Media Bank)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

階段下に広がる元老院広場(Sonaatin tori:セナーッティン・トリ)は、御影石が敷き詰められたフィンランド最大の市民広場だそうで、クリスマス前にはマーケットでにぎわいます。その中央には、フィンランド人にフィンランド人としてのアイデンティティを持つことを奨励し、市民から敬愛されたロシア皇帝アレクサンダー2世の像が立っています。

 

【ウスペンスキー寺院】

黄金のたまねぎ状の装飾を施した屋根がロシア的なウスペンスキー寺院(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

黄金のたまねぎ状の装飾を施した屋根がロシア的なウスペンスキー寺院(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

ヘルシンキ大聖堂からもう少しカタヤノッカ港よりの丘には、金の装飾屋根がまぶしい赤レンガの教会がそびえたっています。こちらが、北欧最大のロシア正教の教会、ウスペンスキー寺院です。この教会は「生神女就寝大聖堂(しょうしんじょしゅうしんだいせいどう)」とも呼ばれ、同じ名称のものがモスクワのクレムリンにもあります。こちらは、ロシア帝国の建築家によって、1862年から1868年に建設されました。

中世には西のスウェーデンから、カソリックの十字軍によってキリスト教の影響を受け、やがてスウェーデン王国の一部にもなったフィンランドですが、東はロシアからロシア正教が入り込む隙を伺っていたというわけです。

荘厳な内装と、キリストや聖人、天使や聖書における重要出来事やたとえ話、教会史上の出来事を画いたイコンが並ぶウスペンスキー寺院の内部(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

荘厳な内装と、キリストや聖人、天使や聖書における重要出来事やたとえ話、教会史上の出来事を画いたイコンが並ぶウスペンスキー寺院の内部(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

トーベ・ヤンソンが生まれ育ったカタヤノッカ地区を見守る、ウスペンスキー寺院(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

トーベ・ヤンソンが生まれ育ったカタヤノッカ地区を見守る、ウスペンスキー寺院(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

この教会の見どころは、ロシア正教会ならではのきらびやかな空間、美しい装飾や厳かなイコンの数々で、シンプルなヘルシンキ大聖堂とのコントラストが面白いです。またこの界隈は、ムーミンの原作者であるトーベ・ヤンソンがよく絵を描きに訪れていた場所でもあります。その彼女の視点を感じてみるのもまた一興です。

 

【テンッペリアウキオ教会】

岩肌と共鳴するパイプオルガンの音は、聞く人の耳を虜にする(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

岩肌と共鳴するパイプオルガンの音は、聞く人の耳を虜にする(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

「岩の教会」の名で知られるテンッペリアウキオ教会は、岩盤の中を繰り抜いてできた世界でも珍しい近代建築物です。

この教会は外観が本当に岩そのものなので、ただでさえ岩だらけのこの地域では、気が付かずに歩き過ごしてしまうことがあります。こちらも福音ルター派なので、シンプルな設計ですが、岩肌がむき出しに残されている壁の上部にはめ込まれたガラスからは自然光が降り注ぎ、非常に神秘的な空間です。

真上から見ると見事に岩の真ん中がくり抜かれているのが一目瞭然のテンッペリアウキオ教会(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

真上から見ると見事に岩の真ん中がくり抜かれているのが一目瞭然のテンッペリアウキオ教会(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

はめ込みガラスから差し込む光が、天候や季節によって変わる(撮影:高坂翔輔 2016年「かもめ大学フィンランド・スタディツアー」より)

はめ込みガラスから差し込む光が、天候や季節によって変わる(撮影:高坂翔輔 2016年「かもめ大学フィンランド・スタディツアー」より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1969年に完成したこの教会は、第二次世界大戦で建設計画が中断され、終戦後にデザイン・コンペが開かれるなど、歴史的側面から見ても面白いですし、岩には氷河期に削られてできた模様も残っているそうですので、考古学的な見地からも見どころがあります。

さらに、この岩の音響効果が良いことから、この教会はコンサート会場として使われることもあり、運が良ければ、昼間でも聖壇で行われるピアノやコーラスなどの生演奏(無料)を聞くことができます。

岩に囲まれた入り口が見つかるまで、ぐるぐると岩の周りを一周してしまうことも(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

岩に囲まれた入り口が見つかるまで、ぐるぐると岩の周りを一周してしまうことも(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

岩が雪に覆われてしまうと、さらに見つけにくくなる。そのミステリアスなところが魅力の一つでもある(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

岩が雪に覆われてしまうと、さらに見つけにくくなる。そのミステリアスなところが魅力の一つでもある(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【カンッピ礼拝堂】

ヘルシンキの街の真ん中から空にそびえたつ「ノアの方舟」という風貌のカンッピ礼拝堂 (画像提供:K2S Architects Ltd)

ヘルシンキの街の真ん中から空にそびえたつ「ノアの方舟」という風貌のカンッピ礼拝堂(画像提供:K2S Architects Ltd)

カンッピ・ショッピングセンター脇に、いきなりドンとそびえる木造建築。この一見ノアの方舟のような不思議な建物が、別名「沈黙のチャペル」とも呼ばれるカンッピ礼拝堂です。

この礼拝堂は、2012年にヘルシンキで開催された「ワールド・デザイン・キャピタル」のプロジェクトの一環として建設されたもので、「都会の喧騒からの避難場所として市民に癒しをもたらす」というコンセプトから、世界的にも注目されました。

礼拝堂の中は静寂そのもの。フィンランド産の樹木の香りが漂う都会のオアシス(画像提供:K2S Architects Ltd)

礼拝堂の中は静寂そのもの。フィンランド産の樹木の香りが漂う都会のオアシス(画像提供:K2S Architects Ltd)

造られたばかりの頃には、いぶかしげに見上げながら歩く人が多かったが、今ではすっかりこの広場のなじみの場所に(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

造られたばかりの頃には、いぶかしげに見上げながら歩く人が多かったが、今ではすっかりこの広場のなじみの場所に(画像提供:City of Helsinki Media Bank)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外壁にフィンランド産のトウヒ材、内壁にはアルダー材があつらわれた、この空間は、中に入るや否や周囲の物音が遮断され、木のぬくもりと香りと静けさに包み込まれます。短い滞在で、森や湖まで出かける時間が無い時や、せっかく森と湖の国に来たのに、ついショッピングや都市観光にふけってしまった!という心残りがある旅人が、帰国フライトの前に懺悔に駆けこむにも――ピッタリな教会です。


【Helsingin tuomiokirkko(ヘルシンギン・トゥオミオキルッコ/ヘルシンキ大聖堂)】

住所:Unioninkatu 29, 00170 Helsinki

TEL:+358 9 2340 6120

アクセス:ヘルシンキ中央駅から東方向に徒歩約5分、トラム1,1A,7A「Hallituskatu」下車徒歩すぐ

開館時間:9:00~18:00(6~9月は24:00まで)

休館日:なし(開館中も、特別礼拝やイベント中は立ち入り不可)


【Uspenskin katedraali(ウスペンスキン・カテドラーリ/ウスペンスキー寺院)】

住所:Kanavakatu 1, 00160 Helsinki

TEL:+358 9 85 646 200

アクセス:ヘルシンキ中央駅から東方向に徒歩約12分、トラム4番「Tove Janssonin puisto」下車徒歩約3分

開館時間:火~金曜9:30~16:00(夏季は19:00まで)、土曜10:00~15:00、日曜12:00~15:00

休館日:月曜(開館中も、特別礼拝やイベント中は立ち入り不可)


【Temppeliaukion kirkko(テンッペリアウキオン・キルッコ/テンッペリアウキオ教会)】

住所:Lutherinkatu 3, 00100 Helsinki

TEL:+358 9 2340 6320

アクセス:ヘルシンキ中央駅から北西方向に徒歩約20分、トラム2番「Sammonkatu」下車徒歩約5分

開館時間:月~土曜10:00~17:00、日曜11:45~17:00(夏季は全日17:45まで)

休館日:なし(開館中も、特別礼拝やイベント中は立ち入り不可)


【Kampin kappeli(カンピン・カッペリ/カンッピ礼拝堂)】

住所:Simonkatu 7, 00100 Helsinki

TEL:+358 9 2340 2018

アクセス:ヘルシンキ中央駅から西方向に徒歩約3分、カンッピ・ショッピングセンター前

開館時間:月~金曜08:00~20:00、土・日曜10:00~18:00

休館日:なし


 

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