靴家さちこ医療の現場を再現させた教室の中で、介護士になるための基本を勉強中
サンタクロース村メルマガ読者の皆様、Moi!フィンランド在住ライターの靴家さちこです。日本の桜は、今年は変に早くなく、例年通りに咲いたそうですね。きれいな桜と一緒に日本各地の入学式の様子もネット越しに眺めていた私ですが、実は今年から学生です。保育や介護など福祉分野の共通基礎資格「ラヒホイタヤ(lähihoitaja)」の取得を目指して、職業訓練校の成人教育コースに通っているのです。コースはもう1月から始まっているので、私はもうピカピカの一年生ではありませんが、今回は、そんな教育の現場からレポートします。
ところでまず、私がなぜこのラヒホイタヤ(Lähi=近くで hoitaha=面倒をみる人という意味)を志望したのかと申しますと、その背景には次男がいます。彼が2歳の時に、ネウボラの健診で言語の発達が著しく遅れていると相談したところ、ヘルシンキ大学付属の医療機関での検査となり、重度の言語障害があることがわかりました。その次男が保育園に通い出したのは3歳半のこと。言葉の理解が弱く、独特な発話をする彼をサポートする為に、専属のアシスタントが通ってくるようになりました。
ネイルアートにつけ睫毛とおしゃれなアシスタントのAさんは、自由でマイペースな次男について回って、母親のように接してくれ、時には本気で叱ってくれました。次男の面談では、怒った時の次男のモノマネまでしてくれて、次男の日常をリアルに教えてくれました。Aさんが退職してしまい、引き継いだBさんはやや高齢だったのですが、やんちゃな次男の外遊びにも毎日付き添ってくれ、次男独自の言語表現も私達とのコミュニケーションを通して学び、美容院に行った次の日に次男に「Bはスタイリッシュだね」とほめられるまでの仲良しになっていました。そんなAさんやBさんの仕事ぶりに魅せられて、いつかは私もなれるかなと思っていたのがこのラヒホイタヤ。
引き続き小学校でもクラスのアシスタント(これもラヒホイタヤ)のお世話になりながら、やっと次男が2年生になった昨年の秋、私は職安に志望校を告げて申請し、待つこと1か月で入学試験に招待されました。教室のおよそ80%を占めるフィンランド人と肩を並べて鉛筆をにぎり、別途フィンランド語のテストに個人面接も受けて、ようやく合格通知を手にした時、私はほんの一瞬喜びに胸躍らせて、その直後にフィンランド語で受けるこれからび授業のこと、保育園と介護施設などを5週間ずつ通う職業訓練のことと、テストの数々のことを思って顔面蒼白になりました。
ラヒホイタヤの成人教育コースは2年間で、保育、医療、リハビリテーションの3部門を学びます。最初の1年で3部門をまんべんなく学び、それぞれ該当する研修先(保育なら保育園、医療なら老人ホーム、リハビリなら障害者施設など)に4~5週間ずつ研修に出向き、最後の1週間が現場での検定試験になります。2年目には1年目の経験をもとに、自分の専門を選び、より深く学びます。1年目と同様、研修先も自分で見つけて現場で実践的な知識を身に付けます。卒業前には資格検定もあります。もちろん、合格しなければラヒホイタヤにはなれません。
かくして1月から始めた学生生活は、職安からの日当をいただきながら通い※1、給食も無料※2でいただき、3科目それぞれの先生から爆弾のように投下される課題の数々とテストも次々にクリアし、フィンランド人とのグループワークにグループテスト、休み時間の談笑にも首を突っ込んで……結構がんばっているではないですか、私!!保育園の研修も無事に終わり、子供達にお習字の指導までして差し上げて、検定は上中下の中レベルで合格。
こうサラっと書くとなんだかすごそうですけど、実はテストがあることも知らずに、当日教室に入ったらいきなりテストが始まって、脳内の常識の全てを結集させて回答しきってギリギリ合格したとか、どう逆立ちしても間に合わなさそうな締め切りの課題は、スっとぼけて無かったことにしようとて、先生からメールで催促されたリ……ずいぶん汚いこともしてますね。グループワークでのチームへの貢献度が低すぎることで、自己嫌悪にさいなまされ、その次のグループテスト前には二晩ほど徹夜して臨むなど、かなり無理もしています。
そんな試練の日々でしたが、日本の皆さんの新学期がまさにこれから佳境を迎えようというところで、5月に入ったらもう、私たちは期末気分。だって6月から長~い夏休みが待っているんですもの!2か月にも及ぶ長い夏休みを満喫してから、秋に私を待ち受けているのは、老人ホームでの研修です。私は、脈をとるのも、聴診器を使って血圧を測るのもへたくそなので、夏休み中にちょっと自主トレをしておきます。日本の学生の皆様も「Tsemppiä(ツェンッピア=がんばって)!」
※1 学校に通って資格を取得し、就職して国に納税する見込みがある人には、一日44.82ユーロの日当が支払われます。
※2 給食は、学校によっては有料のところもあるそうです。私の場合はラッキー!
【参考URL】
ラヒホイタヤ修行の日々はツイッターでもつぶやいています。
@Kutupon