サンタクロース事務局

サンタクロース村通信

世界にひとつの「ムーミン美術館」を拝見!    ~オープン当日の「タンペレホール」に潜入~

靴家さちこ

170620-0004サンタクロース村メルマガ読者の皆様、Moi!フィンランド在住ライターの靴家さちこです。「夏の月(Kesäkuu/ケサクー)」の名が付く6月だというのに、フィンランド南部では、まだ冷たい雨が降ったりやんだりです。数日前まで「ええい、日本の梅雨とシンクロしていると思えばこれしきのこと!」と、自分に言い聞かせて持ちこたえてきたのですが、北部は連日夏日和と聞き、つくづくやる気をなくしておりました。ところが、そんな腐った私の気分をパッと盛り上げてくれるニュースが……。なんと6月17日に、世界でひとつの「ムーミン美術館」が、タンペレに誕生するというのです。中部タンベレなら、南部より良いお天気かも……という淡い期待も乗せて、一路北西へ、ムーミンに会いに行って参りました。今回は、その様子をレポートいたします。


❶大空にそびえるタンペレホール ❷子供達に会いに館内に向かう、ムーミンとその仲間たち ❸ムーミンのお話の中のお花畑に腰かけて、ちょっと一休み ❹何度も描かれるうちに、姿を変えていったムーミンの姿を時代と共に紹介する展示 ❺ソフィア・ヤンソンさん(左)、アンナ-カイサ イコネンさん (中)、パウリーナ・アホカスさん(右)のお三方によるテープカット


「あれ?タンペレって、ムーミン谷博物館があるところでしょう?」とお気づきになった方は鋭いですね。ムーミンファンの方であれば、一度はいらしたことがあるかもしれません。そうなんです、2013年からタンペレ美術館内に「ムーミン谷博物館」というのがあったのですが、2016年の秋に閉館しました。それは、同博物館に埋蔵されていた貴重な展示品の数々が、このフィンランド北欧最大の多目的文化センター「タンペレホール」に移動することが決まったから。このプロジェクトは実に2年半もかけられており、今年独立100周年を迎えるフィンランドの記念プロジェクトの中でも最大級のものだそうです!

美術館の主役は、世界で約40か国語に翻訳されているムーミンの物語の作者であり、画家でもあるトーベ・ヤンソンのオリジナル原画などの作品と、そのトーベの生涯のパートナーで、グラッフィックデザイナーのトゥーリッキ・ピエタラが製作した、ムーミン物語の立体ジオラマの数々。合計2000点以上にものぼる作品の数々は、1986年、当時70歳だったトーベ・ヤンソンがタンペレ美術館に寄贈したものです。

当初トーベは自分の故郷であるヘルシンキの美術館に残したかったそうなのですが、引き取り先が見つからず、ちょうどトゥーリッキの作品展示を予定していたタンペレ美術館が受け入れてくれたのだとか。そのようなご縁に恵まれたコレクションは、タンペレ美術館での展示が終わった後、1987年にタンベレ市立図書館の1階に移動し、そこに「ムーミン谷博物館」が誕生したのでした。

さてその「ムーミン谷博物館」は、1990年代に日本と欧州でムーミンのテレビ番組シリーズが放映されたことから、海外でも注目されるようになり、日本を筆頭にロシアや欧州からの外国人も含む、子供から大人までが訪れる博物館になりました。やがて100万人以上もの訪問客が来場し、25年間好評を博し続けた博物館も、図書館の老朽化が進むにつれ、再びタンペレ美術館に移動し、今までの3分の1と少ないスペースを仮住まいとして「ムーミン谷博物館」を再開しました。――ああ、仮住まいだなんて心細い。より広い安住の地はどこだろう?――とコレクションたちがそう思っていたかどうかはわかりませんが、そんなムーミン一族のピンチを救ったのが、このタンペレホールだったというわけです。

それだけ聞くと「それでは、もともとあった作品が移動しただけなの?」と思われてしまいそうですが、とんでもない!この新しいムーミン美術館は「世界にひとつだけ」と胸をはって断言できる、臨場感たっぷりの体験型ミュージアムです。美術館のインテリアには、トーベが絵本の中で使った色彩だけが使われており、音声ガイダンスや効果音に、アニメーションやトリックアートなどなど、不思議なしかけが童心をそそります。まさに大人も子供も、一旦その扉をくぐれば、ムーミンの物語でおなじみの、人生の知恵、ユーモア、元気いっぱいの冒険心、人の温もりや友情に満ちた温かい世界に迎え入れることでしょう。私もしばしその美しい作品の数々に目を奪われ、美術館には記事を書きに来たこと、外のお天気がどうであったかもすっかり忘れて、その世界に魅了されておりました。タンペレ在住でもないのに、勝手に皆様を歓迎いたします。「Tervetuloa(テルヴェットゥロアー=ようこそ)!」

【参考URL】

2017年6月17日にオープンした、「ムーミン博物館」の公式サイト(日本語)

https://muumimuseo.fi/ja/


MUUMIMUSEO170620-0005❶フィンランド語では「MUUMIMUSEO(ムーミムゼオ)」と申します ❷美術館内すぐのところで出迎えてくれるムーミン像 ❸12冊の巨大な絵本を目印に展示品がセクション分けされています ❹時代を感じさせる初期の頃のムーミンの原画がインテリアに ❺世界の言語で「ムーミン」と書かれている柱 ❻美術館のすぐそばに読書コーナーもあります


Tove Marika Jansson & Tuulikki Pietilä170620-0008❶ごろりと置かれた石の上から木漏れ日が下りてくる空間。自然を愛したトーベのお人柄が伝わってきます ❷海をこよなく愛し、貝殻をよく拾って歩いたというトーベ。ジオラマにもたくさんの海の場面があります ❸モノクロのムーミンの原画。画家でもあったトーベは、その技法も多岐に渡っていました ❹ガッシュという不透明な水彩絵の具を駆使した挿絵 ❺トゥーリッキとトーベのにこやかな写真と、トゥーリッキが手がけた精巧なジオラマや人形のディテールや素材も公開されています


Diorama170620-0006❶ジオラマ『ムーミンパパの思い出』 ❷ジオラマ『岸辺に佇むムーミントロールとモラン』 ❸ジオラマ『トゥーティッキの雪のうま』 ❹作品のそばのディスプレイでは日本語の案内やオーディオガイドもあります。日本語は翻訳も音声も、ムーミン研究科家の森下圭子さんによるもの ❺頭上に大きく輝く光の塊は『ムーミン谷の彗星』 ❻足元からもムーミンの物語が語りかけてきますので、ご注意ください!


Vetovoima170620-0007❶怪しいトンネルの中に入ると ❶-2 あなたの本当の姿が見えます! ❶-3 私はいつも腹ペコ、食いしん坊のスニフでした ❷触ってもいいですよ、というサイン。これは……? ❸「触れて鑑賞するムーミン」というコーナーにあります。点字やムーミンの顔に付けられた凹凸でムーミンを感じることができます ❹ニョロニョロのアニメーションに手をふれると ❹-2 雷が落ちますのでご注意!(※今日この日の為に日本から駆け付けてこられた方にご協力いただきました)


matkamuisto170622-0001❶美術館の中では世界各国の音声付きで可愛いイラストが壁に映し出されています ❷美術館わきの読書コーナーには、「あのお話のあの場面はなんだったのかな?」という人や「ちょっと予習してから美術館に行こう」という方のために日本語で書かれた本も置いてあります ❸ショップではムーミングッズ及び、フィンランドを代表するデザイングッズなどが販売されています ❹お勧めは、タンペレホール限定のチョコレート(手前)。ムーミン美術館のオープンと独立100周年を祝うアラビアのムーミンマグ(奥)です


Avajaiset170622-0002❶海外メディア向けの記者会見で、歓迎の言葉を述べる、タンペレホールの館長、パウリーナ・アホカスさん ❷トーベ・ヤンソンの姪でムーミンキャラクターズ社のクリエイティブディレクターのソフィア・ヤンソンさん ❸ファンファーレの音楽と共に会館の祝辞を述べるタンペレ市長のアンナ-カイサ イコネンさん。このそうそうたるメンバーが全て女性というのも、男女平等の国フィンランドらしいですね ❹ムーミン美術館のオープンのその瞬間を見届けに駆けつけた人たち。待ち遠しくて首を長くしています ❺館内に一番乗りを果たす人をとらえようと、カメラを構える報道陣。ものすごい熱気です! ❻日本からも?実に多くのムーミンファンの方たちが並んでおられました ❼タンペレホールの裾に広がるソルサ公園。やっぱり中西部のお天気は最高でした!


 

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