サンタクロース村メルマガ読者の皆様、モイ!フィンランド在住フリーライターの靴家さちこです。フィンランドでは暖かい秋が終わり、10月上旬にして初霜が下りました。というわけで、もうチョコレートの季節です。
チョコレートとは、地元のフィンランド人にとっても、半ば寒さ暗さを紛らわせるための麻薬のようなお菓子ですが、正直申し上げてフィンランド最大の食品メーカー、ファッツェル(Fazer)社のチョコレートは、実はそんなにチョコレート党でもない(なかった)私が食べても美味です。フィンランドにいらしたことがある方なら、カフェやレストランで温かい飲み物を注文すると、一粒おまけで付いてきたりするので、なじみがあるでしょう。さぁ、今回はそんな魅惑の茶色いお菓子に迫ってみましょう。
まずこのチョコレートの歴史は、創始者であるカール・ファッツェルという製菓職人の話から始まっています。スイス生まれの父の末息子カールは、1866年にヘルシンキで生まれ、製菓業を志してサンクトペテルブルクに旅立ち、ロシアの製菓職人に弟子入りをし、ベルリンやパリでも修行を重ねてから帰国しました。帰国後早速カールがヘルシンキにフレンチ・ロシア風のカフェを開設すると、カフェは瞬く間に人気を博し、大成功を収めました。
そして現在でも愛され続けているチョコレートの味は、2代目のスヴェン・ファッツェルの功績から生まれました。スヴェンの友人のイギリス人の義理息子が眼病を患っていたので、スヴェンが知り合いで腕の良い眼科医を紹介したところ、目は完治し、しかも医者は治療費も受け取らなかった為、イギリス人はスヴェンへの感謝の印に、スイスのチョコレート職人の秘伝レシピを教授してくれたのです。
スイス生まれの父を持つ一代目が、スイスから美味しいチョコレートの製法を持ちこんできたのかと思いきや、めぐりめぐってイギリス人経由でスイスの秘伝レシピが入ってきたのだとは、面白いですね。さて今でもこのレシピの通りに作られている、青い包みで有名な「ファッツェル・シニネン」は、北欧では唯一の粉乳未使用で、フレッシュミルクのみを使った「ミルクチョコレートの中のミルクチョコレート」です。レシピがスイス生まれというのがちょっと悔しいですが、このミルク味の素朴さと優しさは実にフィンランドを代表する味です。
こんな温かい歴史を持つファッツェルのチョコレートには、プレーンなミルクの「ファッツェル・シニネン」を筆頭に、オレンジクリスピー&ダーク、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、ヘーゼルナッツクランチ、クッキークリスピー、粒リコリス(ラクリッツ)、苺バニラ、ブルーベリーヨーグルトクリスピー、ペパーミントクリスピー、ポップコーン、レーズンナッツ、ダーク、ライトミルク、ラズベリー&クランベリーの15種類ものフレーバーがあります。フレーバーには年に2~3回、旬の果物や流行の食材を取り入れた新種が登場し、定着するものもあれば、季節限定で市場から姿を消して「幻のフレーバー」として思い出に残るものもあります。
お土産用にちょうど良い、一人用の食べきりサイズもあります。こちらにはレッドチリやホワイトチョコレートも果敢に採用し、シニネンのシリーズにもない、もっと冒険的なフレーバーもあります。我が家の男性陣は保守的なので、プレーンのミルクチョコレートしか食べたがらないので、時々自分だけ新種を試したい時や、日本へのお土産にも重宝しています。
また、晩秋のここしばらくは自宅用のマイ・チョコレートで間に合いますが、お誕生日や特別な日の贈りものには325g入りの箱が定番です。この先クリスマスプレゼントを贈り合う季節に入ると、缶入りや30センチ近くもある贈答用のセットも各種店頭に登場します。
このような特別なチョコレートは、子ども達にはもちろん、親戚同士でも贈り合い、クリスマス休暇前には学校や保育園の先生にヒヤシンスの鉢植えなどのお花と共に、感謝の気持ちを込めて贈ります。嗚呼、季節の移ろいは早いですね。それでは、お薬代わりにチョコレートを一粒、いただきます!