サンタクロース事務局

サンタクロース村通信

ケヴァットユフラ(春パーティー)でおめでとう!

サンタクロース村メールマガジン読者の皆様、Moi(こんにちは)!フィンランド在住ライターの靴家さちこと申します。

フィンランドではヘルシンキから35キロのところにあるトゥースラに、フィンランド人の夫と10歳と6歳の息子達と暮らしています。ご縁があって、サンタクロースの国フィンランドから旬な話題を発信させていただいております。

さて5月も末になりますと、学校や保育園の「ケヴァットユフラ(春パーティー)」の季節です。なるほど半年ほどもある長い冬を越せば、それはもう春の到来を盛大に祝いたいのでしょう……と思われるかもしれませんが、これは単なるパーティーではなく、日本の行事に置き換えると「終業式」や「卒業式」に相当するものです。

日本ではゴールデンウィークが終り、これからまた夏休みまでもうひと踏ん張りの5月下旬のことなので「もう?!」と驚かれることが多いのですが、フィンランドを含む北欧では、中欧や南欧の7月より一足先に、6月の第一週目の終わりからもう夏休みが始まります。6月末の夏至の白夜が北欧の夏のクライマックスですから、7月まで待ってなどいられないのです。

学生の夏休みは8月の第二週目ぐらいまでと10週間(約二か月)もあります。日本では「欧米の学校の新学期は9月」というのが定説ですので、新学期が8月からと言うと「もう?!」と驚かれますが、9月から新学期が始まる国では夏休みも7月からですから、6月から休んでいる北欧っ子は8月から新学期を始めてもバチが当たらないでしょう。

というわけで前置きが長くなりましたが、前年の8月からの一年を総括する春パーティーでは、子ども達が保育園や学校の体育館、もしくは庭で合唱や劇、詩の朗読などを発表します。さらに、エシコウル(プリスクール)以上になると、卒業生に対しては一人一人名前が読み上げられて卒業証書とバラの花が一本ずつ贈られます。先生方にもお世話になったお礼に、花束やちょっとしたプレゼントを贈ります。

それぞれの学校や保育園で独自のスタイルがあり、父母が焼き菓子などを持ち寄り子ども達の発表が終わったら、みんなで食べる保育園もあれば、その焼き菓子を子ども達の遠足費の足しにする為に販売する学校もあります。長男が通っていた保育園では、園庭で子ども達の発表が終わったら各自持参したソーセージを焼いてBBQもしましたが、現在次男が通っている保育園では園庭が狭すぎる為、駐車場でお遊戯が披露されました。

また、引っ越す前に長男が通っていた隣町の学校では、大きな体育館に1年生から6年生までの全学年が出し物をしたものですが、今の学校は体育館が狭いため、今年は奇数の学年、来年は偶数の学年というように出し物をする学年を決めて毎年来場する父母の数が半分になるように調整しています。このように学校や園の伝統や方針によって違いが出てきますが、施設の規模や仕様も大きく左右するようですね。

ちなみに保育園児の夏休みは、親の職場での夏季休暇に合わせて申告する形になりますので、一斉には始まりません。つまり春パーティーが終わっても、夏至祭がある6月末ギリギリまで通常保育を続ける子ども達や、まとまった休みを取らない子どももいるのです。そのせいか私は、長男が園に通い始めてから数年経つまで春パーティーが終業式だとは気が付きませんでした。

我が家の子ども達にはまだ先の話ですが、卒業式があるということは、中学生や高校生には高校、大学、専門学校などの進学問題があります。中学生の場合は、入試ではなく、中学校の10段階評価の成績を元に進学先の高校が決まります。つまり、入りやすい簡単な高校と誰でも入れるわけではない難関校というように、フィンランドでもランキングが存在するわけです。

さらに高校生には卒業資格試験があり、受験生はお弁当持ち込みで一日がかりの試験を受けます。この試験をパスすることで高校卒の資格が授与され、このテストの成績次第で狙える大学の範囲も決まってきます。この試験がまた一筋縄ではないため、「卒業できるかどうかわからないから」と高校進学以外の道を選ぶ生徒もいます。

それぐらい人生の明暗を分ける大きなテストなので、この高校卒業資格を手にしたというだけでも十分に祝う価値があります。学校では、ダンスパーティーやトラックに乗って町中にキャンディーをばらまくなど、楽しい卒業イベントが催され、卒業式では、卒業資格取得者に対して卒業証書と白い学帽と一輪の薔薇の花が授与されます。

さて、晴れやかな卒業式が終わってからも、大学進学希望者が決めなくてはならないのは、志望する大学と学部です。大学入試は高校で習ったことではなく、志望学部の分野で使われる文献数冊から出題されます。受験生は、この指定文献や過去問題集を書店で買って独学します。フィンランドには日本の塾のようなものは存在しませんが、難関大学の医・法・商学部向けには予備校が存在し、3割近くの学生が高校在学中もしくは卒業時に数週間のコースを受講します。人気学部だとテストが数週間にも及び、ストレスから泣き出す受験生もいるそうです。

もちろん不合格で二度も三度もチャレンジする若者もいますが、その状況にある人のことを指す、日本語の「浪人」に相当する名称はありません。というのも、18以上の成人男子には兵役が課せられており(女子は志願で)、そうでなくてもいきなり大学を目指さず、外国に留学したり世界一周に出かけたりする若者が多いからです。すごいことですね。また、上記はあくまで進学を前提としたお話なので、中学、高校を出たらすぐに就職する子ども達もいます。

……はぁ、なんだか書いているだけでドキドキして参りました。まぁ、我が家の子ども達にはまだまだ先の事ですので、今年も学校や保育園にお呼ばれして、一生懸命歌ったり、縦笛を吹いたりする息子たちの姿をカメラの中に収めて参ります。それでは皆様、ヒュヴァー・ケサ(良い夏を)!

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